剣花札第一弹

大黒正宗ぎん(4月29日)4月29日  

真金神社にもゴールデンウィーク到来! なんて素敵な名前! 金、金、金、金、金、金、金、金、金  このお休みの間は何をしよう。 フクちゃんと遊ぼうかなぁ。 綿密に計画立てなきゃ。 いっときたりとも無駄にできないもんね。 時は金なりですよ! でも、こないだの贋札鑑定ゲームは イマイチうけなかったんだよね。 あの子、偽札出す時すぐ震えちゃうし。 複利計算の方が楽しいですかね?  金、金、金、金、金、金、金、金、金 大黒正宗ぎん


永則いずも(4月1日)4月1日 

柳生の大太刀が長すぎ問題発生。 これまで広い場所にいたから 屋敷内での生活が不便きわまりない。  そこで、刀を手放して生活してみる。 もっと早く試しておくべきだった。 大太刀を柱にくくりつけ、 部屋を出て視界に入らなくする。 不安感がすごい。 部屋に戻りそうになるのをこらえて なんとか門までたどり着いた。 これで屋敷での快適な日常が手に入る! と喜んだのもつかの間、 ガッツポーズで振り上げた自分の手には なぜか抜き身の大太刀が握られていた。  次の実験は誰かに協力を頼もう。 永則いずも


八文字ちょうぎ(4月15日)4月15日 

ちょうぎちゃんです。 町外れに触れる蜃気楼が出たとのことで、 ちょうぎちゃんは噂の尻尾を掴みに 捜査を開始した。 まずは住民への聞き取り調査を行ったが、 この調査が意外に難しいことがわかった。 もし触れるというなら、何をもって本物と 蜃気楼を見分ければいいのだろうか。  何日も捜査を続けると、遂に怪しい蜃気楼 もとい人影を発見! なんとちょうぎちゃんに瓜二つだった。 残念ながら今日のところは人ごみに紛れて 失ったけど、次は見つけ次第、 一刀を見舞ってみるつもり。それで蜃気楼 の正体がわかる筈。どんな手応えが残るの か、ちょうぎちゃんワクワク! 八文字ちょうぎ 


雷切ちどり(4月16日)4月16日 

腕の強化訓練を始めて2週間。  いずもさんの筋力トレーニングにも だいぶ慣れてきたと思う。 車輪を操る手さばきも軽やかだ。 脇まわりがきつくなってきたし、 制服もサイズアップした方がいいかも。 代わりに足はだいぶ痩せた気がするけど 車椅子に適した進化ってことだと思う。 欲を言えば刀を握る手がもう一本 欲しいとこだけど。  私はきっとまだどんな風にも変われるし どんどんすごくなれるハズ。 多少の空回りなんて怖くない。 明日が来るのが楽しみすぎてたまらない。 雷切ちどり


長光かんな(5月17日)5月17日 藁人形の打ちつけられた木を見つけた。 かなりの数がある。 もとは鎮守の森らしいから、 そういう用向きも多かったのだろうか。 見て回るうちに、法則性のようなものを 感じて、人形のある木を書き留めてみた。     

呪呪呪(用呪字拼接成了"呪"形) 

うーん、命がけでわざわざ帰らずの森に 踏み込んでまで恨むにしては、 ずいぶん余裕のあることだと思った。 ボクはもっと恐ろしいことを知っている。 長光かんな


鳥養くにと(5月14日)5月14日  

三人チームの最後尾を歩いていた私は ぬかるみに足を取られ、声を上げる間も 無く斜面を滑り落ちてしまいました。  怪我こそないものの、来た道を登るのは 難しい。私はここが「帰らずの森」である ことを思い出しゾッとしました。  周囲にあるのは雨に濡れた木ばかりでし たが、なぜかそれがひどく気になり、しば らく凝視していたときです。私は突如、雨 水の跡が文字を成していることに気づきま した。「みぎへいけ」「そのまま」  文字に従い進むうちに、先を行く二人に 合流できました。二人は私の滑落に気づ いていませんでした。  私を救ったのが何なのかはわかりません が、世界は絶えず何かを知らせているのか もしれません。 鳥養くにと


青江にか(5月20日)5月20日  

きょう わたしは ぼっこちゃんがなくしたカギを さがしに 森へ行きました。  カギを見つけないと ぼっこちゃんが 大変なことになっちゃうと言うので いっしょうけんめいにさがしました。  みんなでがんばったので いっぱいいっぱいカギを見つけました。  これでぼっこちゃんも お家に帰れると思います。  良かったね。  青江にか


御蔵ぼっこ(5月25日)5月25日 

今日は仕事で討伐の連中にくっついて行っ たけど、森みたいな場所は苦手なんよね。 ああいう隠れやすい場所ってのが…ね。  ツッチーや司令はそう思ってないみたいだ けど、私ってどうも存在感が五割引に薄い らしくって、油断するとすぐに見落とされ てはぐれちゃうのよ。 昔からかくれんぼしてても、探すのを忘れ られて、そのまま蔵の鍵を閉められたり… ああ、嫌なことを思い出した! もしかして今でも忘れられてたりしてね。  だから、存在をアピールするのに誰彼かま わず話しかけて歩くようにしてる。 忘れようとしても、そうは問屋が卸さない んだから。グチも増えるってもんだわさ。 御蔵ぼっこ


秋草ゆき(6月16日)6月16日 

任務中に立ち寄った疎開村だったけど、 入口のない壁がぐるりと村を取り囲んで ちっとも中に入れない。 こういうのはたいてい憑喪の仕業だ。 でも、不謹慎だけどちょっとおもしろい。 なにか頓智のきいた入り方とかあるかも? 「門」の字に鳥居の形を足したら 「開」になるみたいな。 じゃあまずは鳥居を探してこよう。 なんだかパズルみたい。 あ、その前に甘いものがないかなぁ。  なんてことを考えながら壁を見ていた私。 後から聞いた話だと、そんな私の姿は 憂いを帯びた目で立ち尽くしてるように 見えたらしく、みんな頑張ったんだって。 秋草ゆき


獅子王やとり(3月3日)3月3日 

【今日の夢日記】 私は部屋の中にいて誰かに起こされた。 人々を不安にさせる悲鳴にも似た鳴き声 が風に乗り響いてくる。 あれは…鵺だ。鵺に違いない。 動こうにも体は微動だにしない…。 私は歯噛みしつつ外の様子を窺う。 外では喚声に続いて弦打の音が鳴る。 鋭い矢羽の風切り音に、 ひときわ高く鳴き声がかぶさって、 やがてどさりと重いものが落ちた。 全ては音だけだ。 部外者の私には見ることも許されない。 まだ獅子王は源頼政に出会っていない のだから。悔しさに叫んだ私の喉から 出たのは鵺と同じ声だった。 これは夢?それとも現実? 獅子王やとり


石田正宗きりこ(6月27日)6月27日 

悩める友を救う心優しき偉大な人物… その名は、石田正宗きりこ!  皆が寝静まった夜、廃屋の片隅で きりこは友人の告白に耳を傾けていた。 プライバシーの観点から名は記せないが 天下五剣にも数えられる友人の声は はっきりと震えていた。 自らの求める完璧さとそこに至らぬ 未熟な己とのギャップに苦しむ彼女。 求道者こそがぶつかる苦悩。 無論容易く乗り越えられることではない。 答えを示せるのは壁を超えた者のみ。 そして、きりこにはその資格があった。 真の完璧なエリートに答えられないこと など何も無いのだ。だからそこできりこは わー!ページがもうない!続きはまた今度! 石田正宗きりこ


国行あかし(7月2日)7月2日 

うちは今狙われとる…。 無名堂までのこのこ出向いたんが 運の尽きやった。 着いた時から不穏な気配はしとったのに 気づいた時にはすっかり囲まれとった。 多勢に無勢、ジ・エンドや。 次から次へと飛びかかってくる。 走って撒こうとしたけど、 あいつらすごい速さで回り込みよる。  なんでうち、猫に好かれるん? なんでそないに向かってくるんや。  あそに相談したら 「タコは猫には毒だから与えるな」とかで うちが逆に怒られるし、 まったくもって理不尽や…。 国行あかし


一文字にちこ(7月26日)7月26日 

もーにちこ( *`ω´)だまされた!  任務先はにぎやかなとこがいいって ちゃんとアピールしといたんだよ! ツッチーがここも結構にぎやかだって 言うから来たのに、意味違うじゃん!  ギシギシいってるのは壊れそうな本堂。 ニャーニャーうるさく鳴いてるのは猫。 視線感じたからもしかして ファンが来てくれたのかなって 振り向いたらツクモ。  とびきりの営業スマイルを返せー。 違うの! したいのは斬り合いじゃなくて ふれあいイベントなの! 一文字にちこ


景光りゅうこ(7月13日)7月13日 

今日は定期の見回り任務。 私はいつもどおり巡回コースに入ってる 無名堂に出向いた。  荒れ寺に寄りつく輩は無し。 だけど、本堂には不動明王の座像が残され てたりするんで、そのご機嫌伺いみたいな もん。同じ倶利伽羅竜の剣だし。  ところが最近、台座についた埃の跡から 来るたびに不動さんの場所が微妙にずれて ることに気がついた。 不動が動いてちゃ示しがつかない。 と思ったが、あーなるほどね。 あぐらの足を組み替えてたのさ。 ま、これくらいなら見逃したって バチは当たらないだろ? 景光りゅうこ


日向正宗かちな(8月9日)8月9日 

今日の任務は「けがれち」って呼ばれてる 荒れ地での行方不明者の捜索。 妙に湿っぽくて見るからにあまり気持ちの いい場所じゃない。体の弱い人は病気にも なったりするらしいけど、私は大丈夫。  ただ、捜索って言っても景色自体は何も ないってくらいに開けてて、見晴らしは いいから探すところがないんだよね。 元気のない草がポワポワ生えてる中を 日が暮れるまで歩き回ってみたけど、 特に収穫無しだと思ってた。  屋敷に帰ったら、私の靴に何かついてる って騒ぎになったんだ。どうやらそれ、 草じゃなくて髪の毛なんだって。 私には下を向いて歩く才能がないみたい。 日向正宗かちな


ツッチー(8月31日)8月31日 

力のない土地ってのは 居心地が悪くて敵わねえ。 妙に背筋がすーすーしやがるのは きっと土地のせいだ。  この荒地にも憑喪は沸いて出てくるし、 仏さんはゴロゴロしてやがる。 ここでうちの連中が憑喪相手に剣を 振るってるのを見てると 変な想像が湧く。  ミミズが土を耕すように、 憑喪も枯れたこの土地のためになること をしてるんじゃねえのかって。 その養分が人間じゃ笑えねえし、 育つ実がどんな形になるのかは わからねえけどな……。 ツッチー


左文字こゆき(9月6日)9月6日 

今日、いちこさんのおつかいで 出鉄大社に行ったんだけど、 先にいちこさんが着いててビックリ。  たしかに少し寝坊したし、 途中で寄り道したし、 道に迷ったし、 ついでにお店のぞいたし、 おべんと食べたし、 お腹いっぱいになったから 昼寝もしたりしたけど、 そんなに時間かかってないよ?  ま、いちこさんも別に怒ってないみたい だから、うちは帰ります。 いちこさんの足の速さの秘密知りたいな。 左文字こゆき


狐ヶ崎きっか(9月9日)9月9日 

村雲ごうさん、藤四郎あつみさんと 私の3名で町内の見回りを行う。 今日は町がピリピリとしている。 こういう日は嫌なことが起きる。 そう思っていると、 例の施設から大きな振動を感じた。  爆発があったようだ。 やはり私の勘が当たった。 急いで司令と合流しなければ。 これより現場へ向かうが 不吉な胸騒ぎは増すばかりだ。  これ以上の勘が当たらぬことを祈りつつ 不測の事態に備え、ここに記す。 狐ヶ崎きっか


椒林ひのえこ(10月21日)10月21日 

昨日は今までにないほど 走った一日だったある。  偵察に行った鬼の巣で、 とみみが憑喪の群れの中に孤立したのは ひとえに我の失態ある。  大社まであらん限りの速さで駆けたものの 目が覚めてみれば次の日になってたある。 救出部隊が送られたのかさえ知らぬまま 眠っていただけの我。  幸いにもとみみは無事に帰って来たけれど もはや会わせる顔なんてないある と伝えたら、 あるのかないのかどっちなの? と笑われたのことよ。 椒林ひのえこ


七星とみみ(10月20日)10月20日 いざというときのためのメモ!  最初から星の巡りは悪かったんだよね。 わかってたのに、 ちょっと踏み込みすぎちゃった。  後から来たツクモに出入口を塞がれて、 身動きとれなくなっちゃうなんてバカ。 うーん、ツクモに気づかれてないなら ひたすらじっとしてるのがベスト?  ひーちゃんが直接助けにきてくれることは 期待してない。ひーちゃんなら自慢の 逃げ足でみんなに助けを呼びに行って くれてると信じてるし。 とみみは待つだけ。間に合うかなあ。 ↑さすがひーちゃん! 間に合った! 七星とみみ

三日月ちか(11月20日)11月20日 

とうとう仲間とはぐれ 森の中を彷徨うことになった。 夜になっても月さえ見えないが、 見えずとも存在は伝わってくる。 ついでに仲間も感知できればなおいいの だが、うまくいかないものだ。  月の位置からするに森自体が移動している のはどうやら間違いない。 だとすれば、私がこの場を動かなければ じきに森から抜け出せることになるか? しかし、仲間に会えるとは言い切れない。 少なくとも私の知っている彼女たちは そんな選択はしないだろう。  ここはやはり本来の任務に従い、 藪を薙ぎ払って中心部を目指すとしようか。 三日月ちか


童子切らいこ(11月8日)11月8日 

衝動を抑えられなかった。 もう限界だったのだ。  人を惑わす森という格好の隠れ蓑を 利用して、私はわざと隊からはぐれた。 もう人の目は気にしなくていい。 卑怯な策も毒もいらない。 正攻法で、私の腕だけで、 出会った敵を叩き斬る。 あれは至福の時だった。 私はこうありたかったのだ。  ちかは私を見つけたとき、 狂っていると思ったそうだ。 そうかもしれない。もしあの時、 ちかが剣を止めてくれなければ いったい私はどうなっていたのだろう。 童子切らいこ


大包平ながめ(11月22日)11月22日 

少々困った事態となりました…。 不知藪の探索に赴いた私たちでしたが、め まぐるしく変容する森に翻弄され、夜を迎 えた頃には一人となっていました。 人が入れそうな木のウロを見つけ、蛹に なった心持ちで穴に潜り込むと、私は疲れ もあってほどなく眠りに落ちました。  目が覚めたのは体に感じたかすかな痛みの せいでした。見れば手足に木の根がからみ つき、一部は皮膚に潜りこんでいます。 私は慌ててそれを引きちぎり、ウロから飛 び出しました。私は自ら憑喪の体内に飛び 込んで養分になるところだったのです。 問題は樹に生っていた私の顔をした果実。 吸われた力を取り戻すにはやっぱり食べな いといけないのかしら…。 大包平ながめ


鶴丸くにえ(12月30日)12月30日 

狗地縄町に出来た断層の隆起は まるで墳墓のような形をしていて、 断面にはあの世まで続いてそうな 深く暗い横穴が開いていました。  どんなものも埋められてしまえば 歴史の一部になる。  一度は私も穴の中に入った筈でした。 にもかかわらず私は穴の外にいます。 あのとき私は本当に生き返ったのでしょう か。私は半身をあの穴の中に忘れて来ては いないでしょうか。 穴を覗き込んでいると、そこに飛び込みた いという衝動が私を揺さぶります…。 見知った顔があちらから覗き返している気 がして、私はそっと目を閉じました。 鶴丸くにえ


一振いちご(12月21日)12月21日 

記録写真を撮るように頼まれて狗地縄町に 来た。陶器や焼き物の憑喪が大量発生した 土地らしくて、あちこちに色とりどりの陶 器の破片が散らばった様は、地面の上にモ ザイク模様を描いているよう。これが完全 な形をしてたらさぞ綺麗だったろうな。 同じように炎に焼かれて生まれた存在なの に、朽ちれば錆になるだけの刀と違い、砕 けてなお美しいなんて、なんかずるい。 ……だけど陶器が自然に還るには五万年は かかるという話を思い出し、違う見方もあ るのだと気がついた。この破片は陶器から してみればゆっくりと死にかけてる途上な のだ。欠けたものが戻らないことに変わり はない。これだけ時間があればさぞ走馬灯 を堪能できるだろうと考えながら、 私はシャッターを切り続けた。 一振いちご


羽々斬あめの(1月17日)1月17日  

ふつによれば橋の完成が遅れているらし い。それを聞いて少しホッとしている自分 がいる。橋が開通し富士への道が開かれれ ば、いずれ避けては通れないのが八岐大蛇 との対決だからだ。  神宮は私を対八岐大蛇の切り札と位置づ けているが、私はもはやかつての私ではな い。八岐大蛇を切り刻んだ神剣とは程遠い 折れた剣に過ぎない。今の体で使える技も 身につけはしたけれど、それこそ付け焼き 刃というもの。始まってしまえば勝つしか ない戦いだ。それが今の私にできるのか?  忌々しいことにチラつくのは決まって あの女の姿だ…。いずれ橋は道を開く。 でももう少しだけ待ってほしい。あともう 少しだけ、私の覚悟が決まるまで。 羽々斬あめの


御魂ふつ(1月2日)1月2日  

琵琶江に建設中の橋を視察した。 古来、大河に橋を掛けるは難事業であり、 そのため長らく「彼岸」は川を境とした 「異界」だった。 技術の発展は人の領域を確実に押し広げ、 この国に人の踏み込めない場所などないか のようだったが、憑喪の出現により人類は 「異界」がまだ存在することを思い知らさ れた。  この橋が開通すれば、東への大規模な部隊 の投入が可能になるが、それは逆に東から の未知の憑喪の流入も意味する。 この犠牲が彼我のどちらに及ぼうとも私は 見知らぬ彼岸へと踏み込むのが楽しみでな らない。 御魂ふつ


大禿<大禿(おおかぶろ)>   

人の死体を核とした憑喪。髪を触手のよ うに操ることで移動・攻撃する。  一般に髪の毛の憑喪のように認識されて いるが、名前の由来になった妖怪はほぼ人 型であり、名と体の不一致を指摘する向き もある。これについては命名された当初は 全身が揃っており、這いずる死体のような 形態だったものが、引きずられるうちに体 が崩れた結果、頭部だけになったことが原 因と考えられている。しかし、なぜか頭部 以外のちぎれた部位の方が憑喪になる事例 は見受けられず、そのため「首無し死体は 憑喪ではない」、または「首を見たら大禿 と思え」という経験則が流布している。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ


以津真天<以津真天(いつまで)>   

時計・歯車の憑喪。通常、頭部は胴体に 引き込まれ収納されており、攻撃時に露出 する。  飛行できることから、憑喪の国外への 「渡り」が警戒された時期もあったが、航 続距離・時間ともに短く、現在では自力で 海を渡る力はないと結論づけられている。  命名の決め手でもある「いつまで」とい う鳴き声は、獲物を誘うためのものだと考 えられるが、言葉としての意味は解してい ない模様。その根拠としては「助けて・来 て」等、誘うのに効果的な言葉を選択して いないことが挙げられる。言語としてでは なく、近づくごとに音量を下げ、距離を誤 認させるという効果を狙っているという仮 説はまだ実証の機会を得られていない。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ



一本踏鞴<一本踏鞴(いっぽんだたら)>   

ポストの憑喪。数少ない通信網として残 る郵便の天敵。一本足で移動し、鉄製のボ ディから繰り出されるパンチは重い。 「郵便配達夫は襲わない」という伝承とは 異なり、ターゲットの区別はない模様。投 函された郵便物を消化するわけではないの で、倒した際に出て来た手紙から意外な情 報を入手できることもある。しかし以前、 手紙の内容を信じた隊が全滅した事例から 文面を書き換え、情報を撹乱するのではと いう疑惑が持たれた。現時点では文字を理 解できるほどの知能は確認されていない。  色は基本的に赤だが、いくつかの亜種が 確認されており、青い個体は速達用だと推 測される。また、ピンク色の一本踏鞴を見 ると幸せになるという噂については調査中。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ


逆柱<逆柱(さかばしら)>   

柱の憑喪。その見た目から「柱」自体が 核として分類されていたが、現在では柱に 打ち込まれた「釘」が核であるとみなされ ており、攻撃に際して釘を吹きつけるのも ある種の播種行為の可能性が疑われる。  知らぬ間に家の中の釘を吸収される危険 があるため、廃建材の再利用時には注意を 要する。  また、与えられた名に反して、必ずしも 逆さというわけでなく、移動に際しては いったん土に潜り、常に柱の上下が入れ替 わる。その変則的な移動の仕方から、実は 二本セットで行動しているのだと疑われた 時期もあった。ただし、土を掘り返しても そのような痕跡は見受けられず、柱は一本 であると結論づけられている。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ


塗壁<塗壁(ぬりかべ)>   

壁と塀の憑喪。建造物への擬態を用いた 囲い込みを得意とし、中には町を囲む塀が 全て塗壁に置き換わり狩場を作っていた事 例も報告されている。  壁の材質は何種類か確認されており、強 度に差がある。再生能力が高く、攻撃には 自分の体を破裂させて榴弾のように飛ばす 戦法をとる。また、稀に見つかるスプレー で落書きされた個体は、再生時に落書きも 復元されることから進化した擬態模様と推 測される。ただし、その体内から犠牲者の 人骨が出る点を踏まえると、落書きの報復 に人を襲っているという説も捨てがたい。  なお「アンタッチャブル」と呼ばれる塗 壁の退治に手間どったのは、卑猥な落書き が原因と考えられる。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ

牛鬼<牛鬼(うしおに)>   

農業用トラクターの憑喪。攻撃性が強く 巨大な爪とアゴで手当たり次第に耕作地を 荒らし、農作物に甚大な被害を与えるだけ でなく、衝撃波により小規模な地震を起こ すことで各地で廃墟を拡大させている。  移動時にも常時地面を掘り返すなど、他 の憑喪に較べて破壊に特化している印象を 受けるが、実際のところ破壊が目的か、地 面に埋まる何かを探しているのか、逆に魂 鋼を鋤き混んでいるのかは不明。  広い縄張りを持ち、憑喪が得意としない 水辺での活動も認められるが、他の憑喪と の能動的な連携は見受けられない。使役す ることができれば農耕・再開発に非常に有 益なだけに、研究サンプルの入手しづらさ が惜しまれる。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ


赤舌<赤舌(あかした)>   

溶鉱炉や焼却炉の憑喪。赤舌の名は漏れ 出る炎から付けられた。  ほぼ全身を魂鋼で構成しており、非常に 頑強で頭突きを武器とする。鉄を溶かすほ どの高温を維持することにエネルギーを割 いているためか、行動範囲は狭く、動きは 比較的鈍重。しかし、体内から出現する蛇 状の炎は、広い射程と攻撃力を有しており 注意が必要である。内と外の性質が違いす ぎることから、炉内で溶けている鉄は別の 憑喪であり、二種の憑喪による共生関係の 可能性も指摘されている。  赤舌を自走式溶鉱炉として運用できれば 刀匠の活動エリアの拡大、ひいては戦況を 優位に進めることも可能となるのは明白で 早急な研究開発が望まれる。 憑喪生態考察/記・御魂ふつ


真金神社<真金神社(まがねじんじゃ)>   

出鉄大社の分社。憑喪に対抗すべく社の 下に物理的・霊的な多重結界に防衛された 門前町が広がる武装神社である。  屋敷町には八重垣いちこを長として、刀 匠と真剣少女が常駐している。タタラ場・ 鍛冶場等を備えた町内だけで、真剣少女の 生産と訓練、メンテナンスが可能。また、 町を囲む結界は防御だけではなく、住民か ら神社に力を取り込む機能も担っており、 町全体が巨大な呪術回路を形成する。  この神社単体で大規模な討伐隊の編成が 可能なためか、独立独歩の気風が強く、し ばしば大社の指令に反した行動が見受けら れる。指揮系統の不統一は今後の連携にお いても障害となる恐れがあり、注意を要す る。  


帰らずの森<帰らずの森(かえらずのもり)>  

古来より禁足地となってきた森。「神隠 し伝説」が今も残るが、これについては一 考の余地がある。  「神隠し」は、密生した樹木と方位を狂 わせるほどの磁力が一因と考えられるが、 頻繁に行方不明者を出すほどの障害とは思 えない。ここはかつて鎮守の森であり、内 部に残る神社への立ち入りを制限するため の方便だったと見るのが妥当であろう。  今日まで森林資源は守られ、大天狗落下 後でも大部分が手つかずだったため、大社 は木材の安定した供給源として禁足地指定 を解除している。  追記。憑喪が森に侵入した結果、事故率が 大幅に上昇する。新たなる「神隠し」も懸 念されるため、真剣少女の同行が不可欠。  


疎開村<疎開村(そかいむら)>   

憑喪の被害から逃れた人々によって各地 に自然発生的に作られた村で、固有の名前 を持たないことも多い。ほとんどの場合、 武装神社のような物理的・霊的防御を持た ず、刀匠や真剣少女が常駐するわけでもな いため、村としての生存戦略は隠密性を旨 としている。  総じて村の生産性は低い傾向にあるが、 人の出入りは盛んで、規制の多さを嫌う神 社町から移り住む者もいる。ただし、実際 にはこの過程で相当数の行方不明者が出て いるものと思われる。魂鋼を保有する武装 神社は憑喪の注意を引きつけることで、結 果的に村の平穏は保たれるはずである。も ちろん憑喪に一度目をつけられれば常に全 滅の危機があり、近隣の武装神社との連絡 手段の確保が生命線となるであろう。  


無名堂<無名堂(むみょうどう)>   

「赤地蔵」の伝説の残る荒れ寺。本堂は 大天狗落下時の余波を受け半壊したが、 「地蔵の顔が赤くなると未曾有の災厄が起 こる」という言い伝えがある石地蔵は被害 を免れた。しかし、寺の一大事に際しても 赤くなることのなかった地蔵は信憑性を疑 われるようになり、その後は長らく放置さ れ、野良猫たちの住処となり果てていた。   近年、地蔵の顔が赤くなったという近隣 住民からの報告を受け、再び伝説が注目を 浴びる。赤化の原因は石に含まれた魂鋼に 由来することは明らかであろうが、「なぜ 赤くなるのか」「どこから切り出された石 か」「石地蔵が建立された目的は何か」な ど、解明すべき疑問が多々残されている。  


気枯地<気枯地(けがれち)>   

気枯地とは特定の地名ではなく、土地の 状態を指す呼び名である。「穢れ」に通じ る生命力の低い土地。気枯地では地磁気が 低下、植物は枯れ、生物は免疫力が低下し 病気にかかりやすくなるとされる。反対に エネルギーに満ちた土地はイヤシロチと呼 ばれ、神社仏閣の多くはそこに建つ。  憑喪の出現以降、気枯地は急速に増大し ており、憑喪と気枯地との関わりは明らか であるが、現象が憑喪のエネルギー収奪に よるものなのか、あるいは別の要因による 変位の結果、憑喪が引き寄せられているだ けなのか、現段階ではわかっていない。  既知の土地と比較するとエネルギーの多 寡だけが基準とも思われないため、気枯地 の継続的な調査によって、憑喪の行動原理 の解明に繋がることを期待したい。  


出鉄大社<出鉄大社(いづものたいしゃ)>   

武装神社群の総本社。スサノオに連なる 大国主大神を祭神とする。  大天狗落下後の日本で、特殊な刀剣が憑 喪への唯一の対抗手段となったことに端を 発し、日本各地から回収した刀剣と秘伝の 呪法を組み合わせての試行錯誤を経て、 「真剣少女」を生み出すことに成功した。 その結果、憑喪との戦いを指揮する防衛組 織として再編成された。  武装神社群の活動方針を決めるのは、神 職・巫女によって構成された本部である。 しかし、神託に多くを頼っていると言われ る運営には憑喪の干渉も懸念され、現在も 続けられている戦闘力向上の研究にも多く の危険が指摘されている。また、保管した 大量の魂鋼による霊的汚染が深刻化してお り、結界の強化が喫緊の課題である。  




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