剣花札第二弹

貞宗こうず(4月20日)

4月20日 イライラがとまらない。 ここにいちゃいけないと 頭の中に非常ベルが鳴っている。 何もかもがもどかしい。 ここは私には狭すぎる。 がんじがらめに絡みつく規則。 見えない鎖だらけの牢獄。 今にも落ちてきそうな天井。 指を伸ばしてもギターには届かない。 しかしまだ私には牙がある。 この不自由な世界全てを噛みちぎって 絶対の自由を手に入れる。 私にはそのための牙がある。  …コレもう少し歌詞っぽくまとめられない かな。近いうちにものよに相談しよう。 貞宗こうず

首座のぞみ(4月27日)

4月27日 春。新しい出会いの季節を迎えて、 私も高揚感に満ちています。 そこかしこに縁の糸がはりめぐらされ、 陽の光を浴びて複雑な運命の綾を 紡ぎ出している様子。 私などは人よりも糸の方が気にかかります。 何本もの太い縁に恵まれた方、 いかにも細々とそれでいてねっとりと くっついているのが 腐れ縁というものでしょうか。 中には早くもどこにもつながっていない 残念な方々もちらほらと見受けられます。 そのような方からはそっと身をかわしつつ、 縁を結ぶにふさわしいお相手を 見極めなくてはなりません。 まずは刀匠様とのご縁を 確かなものにしておきませんと。 首座のぞみ

鯰尾ふくら(4月14日)

4月14日 ああ、私はどうして こんなにも臆病なのでしょうか…。 新しいお屋敷に来てからというもの、 どうしようもなく緊張してしまい、 気軽に話しかけることも出来ません。 口を開こうとすれば、そこだけ金縛りに あったように強張って、 もう私の自由にはなりません…。 震えすぎた自己紹介は私のところにだけ 震度7の地震が来てるかのようでした。 でも以前一緒だったりんさんが 「私の魂と共鳴してるんだね」 と声をかけてくれて、 震えは半分くらいに収まりました。  今度こそ自分から話しかけて、 もっと新しいお友達、出来るといいな。 鯰尾ふくら

歌仙むつみ(4月28日)

4月28日 新しい屋敷の周りを散策してみた。 和風庭園は私の好みには合わない。 肌を引き裂くようなバラの生垣も無ければ、 池は誰かが溺れるには小さすぎる。 さまざまなシチュエーションを思い浮かべ ながら巡っても、なかなかしっくりくる風 景が見つからない。 せめてどこかに静かな場所はないだろうか。 悲鳴が上がっても気づかれないような。 爽やかな風が吹き抜ける広い草原で、今日 目をつけた可愛い娘を馬にして鞭を入れる のも楽しそうだ。 しかし、まだそのときではない…。  今日のところは私の浅ましい欲望はまだ笑 顔の下に隠して、お茶でも飲みながら、 ゆっくりと獲物を吟味しよう。 歌仙むつみ

朝倉ふじ(5月1日)

5月1日 非常に無念な出来事がありました。 本日は帰らずの森で伐採を行う方々の護衛 についたのですが、森の中の古い社を通っ たとき、私は見つけてしまったのです。 社の軒に束になって置かれている 古雑誌とおぼしき塊を。 遠目にもボロボロに見えますが、縛られた 状態によってはまだ中のページは読めるか もしれません。しかし。今は任務中…。 勝手に隊を離れるわけにはいきません。 私は歯噛みしつつ社の場所を頭に焼き付け、 帰り道での回収に希望をつなぎます。 作業を待つ間に私は何気なく最後尾のポジ ションを確保しました。 これで後は回収するのみ…の筈がなんと 帰りは別のルートを通るではありませんか。 あの本には何が書かれていたのでしょう…。 朝倉ふじ

竹貫いつみ(5月15日)

5月15日 んーよくわからない。 今日出かけた森の名前は「帰らずの森」 というらしいけど、どうして「帰らず」 なんだろ? 「帰れず」なら「帰れない」でわかる。 でも「「帰らず」は「帰らない」だよね。 自由意志じゃん。 ふじに聞いたらそれは 「帰らない(意思)」じゃなくて 「帰らない(状態)」と解釈しろって。 それじゃかえって強制されたのかなんなの かわからない。森は結局どうしたいの? 帰って欲しいの?欲しくないの? 日本語あいまいすぎる。  まあいいやもう帰ってきたし、私。 海の方が好きかも、私。 竹貫いつみ

芦葉ごう(5月9日)

5月9日 あーしが思うに、帰らずの森って名前ほど 帰れないわけじゃないよね。要は森に入っ ても憑喪に見つからなければいいんじゃ?  危ないのは不意をつかれたときだけだし、 あっちが擬態するならこっちもカムフラー ジュしたらいいし。かくれんぼだと思えば けっこうイケる気してきた。制服も迷彩柄 にして、メイクも緑色に統一してさ。 茂みの中に身を潜めつつ移動して、 むしろ憑喪のバックとる勢いで! って考えたけど、コレあーしが 憑喪に間違われてやられるパターンだわ…。 出発前に気づいてよかったし。  バッグに入れるのは普通に 水とおやつと非常食にしておくよ。 芦葉ごう

同田貫まさ(5月22日)5月22日 森は何だか懐かしい。 いつ憑喪が襲ってくるかという緊張感はあ るが、それでもなお木々の緑に心が踊る。  残念なのは私を含めた皆の格好が大変 森での活動に不釣り合いという事だ。 鬱蒼とした森の中を歩くなら、きちんと 手足を覆った服の方が実用的なのに、 私たちの制服はいかにも下が頼りない。 飛び出た枝にスカートをとられないよう 注意するのにもいい加減疲れた。 かといって丸出しになるのも困るか…。 せめてスパッツくらい用意してほしい ものだ。いっそ自分で調達しようか。 やはり履くなら虎柄のパンツがいい。  でも日本に虎はいないのだ…。 同田貫まさ

池田正宗ながよ(6月8日)

6月8日 早朝。見張りの交代の時間が来たのに、 次の当番が姿を見せません。 おおかた寝坊でもしているのでしょう。 持ち場は一人きりなので、交代が来てくれ るまで離れることができません。 しかし、今日の私に抜かりはありません。 このようなこともあろうかと、あらかじめ 近くの休憩小屋まで渡しておいたロープで 棚板が落ちる仕組みを作っておきました。 私は目覚ましの効果に期待を込めてロープ を解きましたが、十分な手応えにもかかわ らず、結局、次の次の当番が来るまで待た されることになりました。 策の成否を確かめるべく小屋へ向かった私 が見たのは、棚板の直撃を受けて昏倒した 同僚の姿でした。すみません…。 これは労災申請するべきですね。 池田正宗ながよ

鳴狐くによ(6月2日)

6月2日 人を訪ねる目的で立ち寄った疎開村。 村の入り口で目当ての人物の家を教えても らい、その通りに歩いていった筈なのに行 き止まりに突き当たった。 はじめに自分の勘違いを疑い、次に書いて もらった地図を確かめたけど、どちらも間 違いはないみたい。となれば案内自体が間 違いか嘘ということだ。 アタシはもう一度入り口へ引き返してみよ うとして、はたと気づいた。 このご時世、逃げ場のない袋小路など作る だろうか。そんなことを壁を見上げて考え ていると、壁と「目」があった。 それが塗壁だと悟った時にはすでに手遅れ、 疎開村包囲網は最終段階を迎えていた。 アタシは救援が来るまではもうろくに眠れ ないだろうことを覚悟し、ある意味喜んだ。 鳴狐くによ

分部しづ(6月25日)

6月25日 疎開村での憑喪討伐が大体済んだところで、 隊は村に何人かを残して、帰らずの森への 資材調達任務へ移ることになりました。 私のような三歩進んで二度転ぶような子は 危なっかしすぎるということで村への居残 り組です。納得の指名でした。 まだ壁や柱に擬態した憑喪が紛れ込んでい るかもしれないので、駐留中は村中の壁を ひたすら刀で突いて歩けとのことです。 さっそく指示に従って、朝から壁を突いて は印をつけていたのですが、午後になると 未確認のところにまで印がついています。 私のやることを見ていた子供が真似でもし たのか、それとも憑喪が突かれる前に自分 で印を書いたのか…。 どちらにせよ私はこの知恵比べに勝たない といけないようです。 分部しづ

赤木柄はこ(7月16日)

7月16日 今日はお休みでしたが無名堂へ。 遊びに行くような場所ではないのですが、 ドジで運の悪い私にはここくらいがちょう どいいのです。うっかり何か壊してしまっ ても他の人に迷惑はかかりません。 しかし… もう少しのんびりしていくつもりが突然、 憑喪の襲来。滅多に出ないと聞いていたの に…。古籠火が一体だったこともあり、こ こは一か八か戦うことにしました。が、 墓石を盾に回り込むつもりで動いた途端、 石につまずいた私は派手に転びました。 不運な我が身を呪います…。 すると、それが効いたのでしょうか、 なんと近くの墓石が古籠火に倒れかかり 動きを止めてくれたのです。退治した後、 私は横倒しの墓石に手を合わせました。 赤木柄はこ

骨喰りん(7月19日)

7月19日 墓地に満ちる不穏な気配は、我の登場を 知った亡霊たちの戦慄の声に違いない。 無理もない。我が愛刀「骨喰藤四郎」に かかれば、骨身どころか魂さえも打ち砕か れるのがわかっているのだ。 ゆっくりとした我の歩みに呼応して、 ざわめきが退く。間合いを測っているかの ようだ。だが甘い、我の刃はそこに届く。 抜刀一閃、すさまじい衝撃波が墓地中を震 わせ、静寂が訪れた。 見る者もない孤独な戦いを終え、 我は刀を収めた。亡霊たちよ安らかに眠れ。 我は寺を後にした。  …西洋風の墓地ではないのが玉に瑕だが、 それでも中々に良いムードだった。 よし、明日も行ってみるとしよう。 骨喰りん

五月雨ごう(7月20日)

7月20日 巡回で私と組むと雨に降られるから嫌だと 皆さまに振られ、本日は無名堂に一人で参 りました。皆さまの懸念通りの雨降りでし たので、言い訳のしようもありません。 傘を片手の剣術など誰も修練していないで しょうから…。 幸い憑喪も雨を嫌ってか顔を出すことはな く、かといって穴だらけの本堂は腰を落ち 着けるにはいささか頼りなかったので、私 はふらふらと朽ちた墓地を見て回っており ました。墓石についた苔が艶やかに濡れて いるのを見ると、雨もまんざら無駄ではな いと誇らしく感じます。 そこへ不意に現れたのは骨喰さんでした。 聞けば私が一人で出向いたと知り、後を 追って来たようです。私は心遣いに感謝し て、しばし二人で相合傘を楽しみました。 五月雨ごう

村雲ごう(7月23日)7月23日 猫の鳴き声がする。 声は弱々しい。 近いような遠いような声。  建物の中には見当たらない。 猫なら軒下だろうか。 軒下に向かって「にゃ」と呼びかけた。  かすかに返事が聞こえた、気がする。 本当に猫だろうか。憑喪かもしれない。  私は軒下に潜った。 そこにいたのは古い招き猫だった。 招き猫は私を招いて満足したのか、 つかんだ手の中で崩れ落ちた。  この場所を掘るのは、また別の話。 村雲ごう

左文字さよ(8月13日)

8月13日 呪われた土地での任務のせいか、 いつにもましていらないことを考える。 能天気な妹たちはこの土地にも何も感じて いないようだ。  私はあの子たちより先には死ねない。 妹をかばって死ぬなどもっての外だ。 重荷になってはいけない。 復讐などさせてはいけない。 妹たちには私の一生以上の価値がある。 それを台無しにさせてはいけない。 けれど…妹たち何かあれば、 私はいつでも復讐の鬼と化すだろう。  いつに無く剣呑な私の様子に こゆきが首をかしげていた。 私の愛情は歪んでいるのかもしれない。 左文字さよ

貞宗ものよ(8月11日)

8月11日 もー!どこもかしこもジメジメジメジメ! カビ臭いしー、マジ気分下がる…。 行方不明の人たちも、 どうしてこんな土地にわざわざ来て 迷子になるのか意味不明! なにか隠れた特産品でもあるの? ここで採れた食べ物なんてゴメンだし 景色も最悪。目立ったもの何もないし。  おまけに今日に限っては ちょくちょくつまずいて転んで お気にの制服もなごろうも泥まみれ! もうあそこには行かないよ!  でも転ぶたびに、行方不明の人の 持ち物とか骨?なんかが見つかったのは もしかしてラッキーだったのかな? 貞宗ものよ

一文字めづる(8月3日)

8月3日 また枝毛を見つけてしまいました。 深いため息が出そうになるのをぐっとこら えます。幸せ以外にも逃げていきそうで。 ここのところ連戦続きとはいえ、お手入れ に不足があったのでしょうか…。 いっそショートカットにしてしまえばとい う考えが何度頭をよぎったかしれません。 けれど「伸ばせば美しい髪」という幻影に すがるのは私の望むところではありません。 実は昔、ほんのわずかですが髪が切られた ことがありました。そのときの喪失感たる や、すさまじいものでした。  長く美しい黒髪は私が清純を守ってきた証 であり、毛先は生まれ落ちたときの姿その ものです。だから私は今日も枝毛の始末に 悩むのです。お館様のためにも…。 一文字めづる

村正せんこ(8月27日)

8月27日 出先で妙につっかかってくる奴がいると 思ったらやっぱり「正宗」関係者だった。 それは腕章でわかったけど、悪いけど 誰かまでは知らないんだよね。 いっぱいいるから全員の顔覚えてないし。 私のことなんかほっといて欲しいんだけど なんだろう。村正への対抗意識が 遺伝子レベルで刷り込まれてるのだろうか。 いちおう話には付き合うけど、 一段とヒートアップして鬼のような顔して にらんできたりするんだもの。でもね── 本当に鬼になった時にはあらためて 相手してあげるから。妖刀殺しの出番。  うっかりその表情が出たのか、 相手は急にビクッとして引っ込んだ。 そんなに怖い顔してたの私? 村正せんこ

柏あやめ(9月12日)

9月12日 オイラたちは実験中の警護ってことで 大社に呼ばれて、頑丈な結界でくくられた 建物で見張りに立ってた。 実験に参加するのか、 何人もの真剣少女が入っていった後、 太い閂が内にも外にもかけられたのを見て、 初めておや、と思った。 中から祝詞が聞こえ始めてしばらくしたら 突然、猛烈な爆風が内部から…。  オイラが目を覚ましたとき、 事故からもう三日が過ぎてた。 オイラ以外の子は憑喪の妖気を浴びて 鬼女となって消えたらしい…。  でもオイラ、信じてる。 みんな、最後まで戦って戻ってくるって。 柏あやめ

瀬登だいや(9月22日)

9月22日 近頃、水に関係する任務に駆り出されるこ とが多かったのですが、疑問に思っている ことがありますの。 私って本当に水と相性がいいのかしら。 そもそも鉄でできた刀を川に放り込めば沈 むものと相場が決まっています。だからこ そ浮かぶどころか、流れに逆らう神秘性が 引き立つわけですけれども。 でも、これって水に好かれてるのでしょう か。むしろどうやっても沈まないこの身は 嫌われてるといった方がいいのでは?  お友達に相談しても撥水加工で安心だねと 馬鹿にされます。錆を避けるにはありがた い性質なのかもしれませんが、凡人の話題 に共感できないというのもなんだか悔しい ものです。 瀬登だいや

祢々切ふたら(9月8日)

9月8日 日記なんてガラじゃないんだけど、 さすがにやばそうなんで残しとく。  出鉄大社で大きな実験をやるらしくて、 泊まりの警備に駆り出された。 神社に縁のある刀の方が結界内の仕事に 向いてるからって、研究棟に配置された。 ここの空気がめちゃめちゃ重い。 大社の神様は仕事してるの?と聞きたい。 柱にも壁にもしめ縄がこれでもかと巻かれ てるのに、その隙間から漏れてくる鬼気で 鳥肌がひどい…。 鞘の中で祢々切丸が今にも飛び出しそうな 勢いでカタカタいってるのをなんとか抑え 込んでる。どう考えてもこの中にあるもの は斬っちまった方がいい。 明日まで刀を抜くのをこらえられるか? 祢々切ふたら

数珠丸れん(9月7日)

9月7日 本日は出鉄大社より警備任務での召集があ りました。宗旨替えはしておりませんので、 私は門の外を担当することとなりました。  私が警備に立ってからも、 方々から集められた刀匠と真剣少女の皆様 が次々と鳥居をくぐっていきました。  その様子に妙に心がざわつくのは、 信心が足らないせいでしょうか。 それとも、横を通る顔ぶれに何度も同じ顔 を見かけた気がするせいでしょうか。 入ったのと等しい人数が出てくるのだろう かなどと不穏な想像が頭を巡ります。  私は柄にいつもよりきつめに数珠を巻き、 皆様の無事を願いつつ題目を唱えました。 数珠丸れん

藤四郎あつみ(10月27日)

10月27日 今日、積み重なった瓦礫の隙間から ピョコンと出た布の切れ端を見つけたんス。 ごつい外見で誤解されがちっスけど、 カワイイものが大好きな自分には一目で それがヌイグルミの手だとわかったっス。  力には自信があるので、瓦礫をどけて救出。 さすがに潰れてボロボロで片腕がとれてた んスよ。もしや取れた腕も埋まってるん じゃないかと思って、掘り返してたら持ち 主と思しき女の子の亡骸がありました…。 クマはこの子のことを知らせてくて、 隙間を這って出てきたんスかね。 持ち主と一緒にあらためて埋葬したっス。  誰かを斬って名を残すより、名なんか 残らなくても誰かを助けたいっスね。 藤四郎あつみ

津軽正宗じょう(10月9日)

10月9日 鬼の巣の大規模掃討作戦への参加を 仰せつかった。鬼の巣といえば、 大社を襲った「天狗」が逃げ込んだ先 でもある。かなり危険な任務だろう。  私の奥義の名前が「天狗隠し」だから 期待されてるなんてあるのかな? 私の方は和製天狗で、あのキツネのような 憑喪とは似ても似つかないのに…。 いっそ我が身を隠してしまおうか…。  いや違う。今から弱気でどうする。 私は逃げも隠れもしない 正宗の名を預かる身なのだ。 敵が天狗というならば、 私をおいて誰が相手をできようか。 こんな大役こそ私にふさわしい。 津軽正宗じょう

蛍丸あそ(5月4日)

5月4日 虚島坑道内での戦いは過酷だった。  次から次へと押し寄せるツクモによって、 みんなが傷ついていく。 後衛を任された私を守るように陣を組み、 そのおかげで自分の役目に集中できた。 陣形を崩されるたび、前衛を入れ替え、 倒れた者も傷が癒える前に すぐにまた戦いの場へと戻って行く。 その光景に私の心は揺らいだ。 もちろんこの布陣の意図は理解していたが、 あともう少し戦いが続いていたならば 私は体にひとつの傷も負わぬまま、 心だけが折れていたかもしれない…。  行方不明の仲間が見つかったという 知らせが届き、希望の一つとなった。 蛍丸あそ

毛抜こじし(1月28日)

11月28日 今日のこじし様は森の中で探検中だ。 出口が見当たらないのはかまわないけど、 生き物が憑喪しかいないのはつまらない。 楽しい探検気分が台無しだな。  今回はよその神社から来た連中も一緒だ。 でも、二荒山出身の奴らはみんな えらそうだし、どうも会話が噛み合わない。 さっきも「ここと違って春日には鹿が たくさんいたな」と懐かしがっていたら  柄がかわいいとか尻に敷くのに良いとか 神の使いをどういう扱いだと思ったら、 あいつらが鹿といったら鹿革のことらしい。  こじし様はあいつらよりよっぽど エレガントでお上品だったぜ。 毛抜こじし

毛抜らでん(11月18日)

11月18日 不知藪は私にとって 悪夢のような場所でした…。 私が迷子になるべくしてなる場所に 放り込まれれば、 結果はわかりきっていました。  いつの間にか一緒に来た人たちとはぐれた と思ったら、もういつも通りです。 いつまで経っても出口は見つからず、 いつしか私は森とは明らかに違う、 商店街のような場所へと迷い込みました。  結局、私はこじしに発見されたのですが、 あの場所はどこだったのでしょう。 とても懐かしい気がしましたが…。  ちなみにまだ森からは出られていません。 毛抜らでん

大典田みつよ(11月1日)

11月1日 突然、れおが薮の中から飛び出しておどか してきたけど、あれじゃあアタシはビック リさせられないよ。それよりも任務中の 肝試しはやめな! 危なく斬りつけるとこだったよ…。 アタシも生まれつき図太かったわけじゃな い。腐れ縁の鬼丸つな。 あのアホタレのイタズラの悪質さに比べれ ば、ちょっとやそっとのことじゃ動じなく なるよねそりゃあ。 でも、引越しでつなと別れて長いこと経っ た頃に「着てみてくれ」って用意されたの が、昔のあいつとお揃いの服だったとき、 あれにはビックリしたかな。実際は関係な かったみたいだけど、 あいつまだ私に手を回してくるのかって。 この事、つなには秘密にしておかなきゃ。 大典田みつよ

鬼丸つな(12月3日)

12月3日 まったく惜しいことをした! あの町に着いたのはビックリ箱が開いてし もうた後のことじゃ。 地震で急に町が持ち上がり、裂け目から 憑喪が大挙して飛び出す─── 仕掛けとしては単純極まりないが、これだ けの規模のものはワシにも作れん。町の住 人がどのような顔をしたか是非見たかった。 やはりイタズラというものは、反応が面白 くなければ甲斐もないというもの。みつよ の奴はすっかりすれてしもうてつまらん!  この町で残されたのは憑喪退治くらいじゃ が、鳴らしたクラッカーの紙屑を拾うよう な仕事に何の楽しみがあろうか。 いかんのう、ワシの中の鬼がうずきよる。 憑喪に劣らぬイタズラを仕掛けねばな!! 鬼丸つな

小烏もろは(12月1日)

12月1日 神宮から「何かが起こる」と言われて 狗地縄町に派遣されて来ました。 この町の何を調べたらいいんでしょうか。  もう三日目ですが、今のとこ憑喪の被害よ りも目立つのは地震の多さくらい。 地震は結構派手に揺れてて、その度に食器 の割れる音がすると、まだこんなに瀬戸物 やガラス製品を大事に持ってる人がいたん だなあって感心しちゃいます。 それで町の人が割れ物をまとめて捨てる穴 を覗きに行くんですけど、 今日見にいったら空っぽになってました。 土に還る瞬間を見逃しちゃって残念です。  こんな報告書だとまたわかりづらいって 怒られちゃいますかね。 [狗地縄町観察報告書] 小烏もろは

八重垣いちこ(1月5日)

1月5日 願い橋建設の計画を聞いた時、 私に驚きはありませんでした。 来るべき時が来た、と思うだけでした。 これから私は今まで以上に多くの少女たち を死地に送り込むことになります。 私たちが挑む戦いをありえないという人も いるでしょう。仕方ありません。 たとえ全てが思惑通りに進んだとしても、 それは勝利でも正義でもないかもしれない。 何もかもを振り出しに戻すための戦いに なってしまいます。 少女たちの記憶は残らず、 この日記さえも消えて無くなる…。  だから誰か一人でもいい、 彼女たちの戦いを覚えていて欲しい。 それだけが私の願いです。 八重垣いちこ

古籠火<古籠火(ころうか)>   

電飾?ネオンサインの憑喪。現代の狐火 とでもいうべき存在。  エネルギー源としては電気を好むが、生 物も襲い、ときには自ら発光して獲物を誘 引することもある。夜道では集団で街路灯 に擬態して、実際とは違う道に誘導するな ど、知性を感じさせる行動も見られる。  しかし電気的な照明を確保することが困 難な現在においては、もはやこの種の光自 体が危険と認識されており、人的被害も格 段に減っている。  このため近年ではより自然光に近い明滅 をする新種(ある種の先祖返りとも言える) も現れ、人々には更なる情報の周知が求め られる。地域によって発光パターンに差が あるという報告もあるが未確認。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ


輪入道<輪入道(わにゅうどう)>   車輪?タイヤの憑喪。一輪の車輪の軸部 分から人の上半身が生えたような奇妙な構 造をしている。  移動は車輪による走行だが、車輪自体に 動力は無く、人型の部位が手で勢いをつけ ることで回転させている。  人の上半身に似た形のせいで一見そちら が主体のように見えるが、これはある種の 擬態であろう。  車輪の反対側面にも顔と思しきパーツが 別にあり、攻撃時には逆立ちのように立ち 上がることからも、人型部位はむしろ脚に 近い働きをしていると考えられる。  検証のためヘルメット状の頭部を斬り落 としてみたところ、支障ない活動が確認さ れた上、ヘルメットの中身は空洞だった。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ

古椿<古椿(ふるつばき)>   

植物系の憑喪。名に椿を冠してはいるが、 厳密には椿だけではなく、植物全体を依代 としたものを指す。形状によっては別の名 で呼ばれることもある。  活動形態は植物に近く、葉緑素によって 光合成を行う機能も残っている。  根を触手のように動かして移動するが、 運動能力は憑喪化の段階で獲得したもので はなく、捕食した獲物に根を張り栄養を吸 い上げる過程で、後天的にその形質的特徴 を取り込んだものと推察される。  形状が人型の場合でも機能までは再現さ れておらず、解剖でも脳をはじめとした内 臓器官は見つからなかった。  稀に発見される人の頭部に酷似した果実 はこの憑喪の犠牲者であろう。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ

塗仏<塗仏(ぬりぼとけ)>   

仏壇?仏具の憑喪。依り代の出自から、 本来は仏壇等に擬態して拝む者を内部に引 きずり込む「待ち伏せ型_の捕食スタイル だったと考えられる。  しかし近年の檀家の激減等の影響もあっ てか、短期間で現在の半人半馬のような形 状に進化、能動的に人を襲うようになった。  戸板が変化した両腕も刃物状に使うこと で攻撃力を増している。このような現象は 与えられた「塗仏」という名に形を縛るほ どの情報量が無かったためであろう。  面白いことに不要になった筈の現在でも 体内には戒名まで読みとれる位牌を模した 部位が残るが、宗教宗派を解してる様子は なく、あくまで魂鋼による形状復元力が働 いた結果と考えられる。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ


文車王妃<文車王妃(ふぐるまおうひ)>  

本および書架の憑喪。核となっているの は書架の方だが、元の機能からくる性質な のか、取り込んだ本でその表面が覆われ、 斬りにくい。  蔵書の規格を揃えたがる傾向があり、文 庫版?新書版?百科事典など取り込んだ本 によってサイズに個体差がある。  取り込まれた書籍は劣化を免れることか ら、情報のストックホルダーとしても注目 され、特に漫画雑誌の文車王妃は娯楽に乏 しい真剣少女のターゲットとなっている。  体を構成する本には一冊だけ途中から白 紙のものがあり、その体裁から文車王妃自 体の思考か行動が記録された書きかけの 「日記」のようなものと推測されている。  憑喪の情報を得る手がかりとして未知の 文字の早急な解読が待たれる。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ


月山童子<月山童子(がっさんどうじ)>   

月山ヤマトが妖刀鬼と化した状態。月山 ヤマトをはじめとした真剣少年は、魂鋼を 外科的に埋め込んだ男子の実験体を、術に より制御したものだったが、活動するうち に魂鋼が人体部分を模倣して「人面疽」を 生成した。  やがて本体を超えて大きくなった人面疽 は人格の主導権を乗っ取り、大社の制御下 を離れ行方不明となった。  作られた八体がことごとく同じ結果とな るに至り、大社は計画を放棄、呪術体系を 見直し真剣少女の開発にシフトした。  暴走した人面疽は「妖刀鬼」と呼称され たが、その由来と大社の不手際は公表され ておらず、対外的には憑喪の一種として 「童子」をつけた名で認識されている。 憑喪生態考察/記?御魂ふつ


鬼の巣<鬼の巣(おにのす)>   

隕石「大天狗」の衝突時に飛散した破片 の直撃を受けた土地。  他の場所よりも魂鋼の分布密度が高い。  破片によってできた衝突孔には憑喪が引 きつけられないよう、大社により特殊な鳥 居を用いた電磁結界が構築されている。  超電導と呪紋を併用したこの方法はこれ までの研究により一定の効果が確認されて いるが、封印自体に多大なエネルギーを費 やしているため、持続性への不安と、封印 それ自体が憑喪を誘引するのではという懸 念がある。   地理的に比較的近いこともあり、大社と しては鬼の巣の完全な無力化を試みている が、今のところ計画は進んでいない模様。 

不知藪<不知藪(しらずやぶ)>   

「大天狗」落下後に植物が異常繁殖して 誕生した森。当初は放射性物質の影響など も疑われたが、後の調査で樹木を依代とし た憑喪で構成されていることが確認された。  最大の特徴は森自体が移動力を有するこ とであり、迷い込んだ生物を能動的な迷宮 となって閉じ込めつつ、エネルギーを奪う。  薮の通ったところは不毛の地と変わる。  植物ベースであるためか、夜間は若干運 動量が落ちるようだ。   行動原理は明らかではないが、不知藪全 体が単一個体の憑喪ではないかとの指摘も あり、そうであるなら核を見つけられれば、 一気に殲滅できる可能性もある。  他にも各地で同様の事例が報告されてお り、効果的な駆除法の確立が急務である。 ?


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