「虚島胎動す」物语剧情「うつろなるもの」
—成为虚无之物———————————————————————————————
ツッチー
ふぅ、ようやく一息つけるか。それで、虚島はどうなった?
八重垣いちこ
島の喫水が下がったらしいですよ。まぁ、その距離から島の内部にいる「何か」をどれほど逃したか計算するのは難しいでしょうけど。
ツッチー
そういうことじゃなくてよ……いや、まぁそれも大事だけどな……。
八重垣いちこ
島自体は野生化した憑喪の駆除を続けつつ、ぼっこさんの指揮で緊縛鎖を用いない再結界化を行う手筈になっています。また、それに合わせて島は沖に誘導するとのこと。
ツッチー
けけ、神宮は締め出されたのか。
八重垣いちこ
ええ……虚島もしばらくは我々とも憑喪とも距離を置くことになりますね。これで住民への健康被害も防げるでしょう。
ツッチー
それで、ぼっこは最終的に島の「何か」を抑え込めるんだろうな。あいつに無理ならもうアテはないぜ?
八重垣いちこ
問題ないようです。どうやら空洞のある島の構造が彼女の術と親和性が高いらしいのですね。そして、偶然にも名前が良かったそうで。
ツッチー
「虚島(うつろじま)」の名前が…? いかにも不吉な響きじゃねぇか。
八重垣いちこ
古来よりこの国ではものにできた空洞、すなわち「うつろなるもの」には神性が宿るとされているのです。
ツッチー
あー、なるほど。なんか聞いたことがあるぜ。桃の中には桃太郎、竹の中にはかぐや姫か。
八重垣いちこ
もちろん神には良いものも悪いものもありますが、「虚」という名前が島自体を「うつろなるもの」として機能させる力につながるそうです。
ツッチー
そういや、あいつ……ぼっこも「蔵の中」で生まれたらしいな。
八重垣いちこ
ええ。ですから、なにか近しいものを感じるのかもしれませんね。
ツッチー
しっかし、「うつろなるもの」として扱うってことは、いつか虚に何かが生じ、終いには表に出てくるってことだ。
ツッチー
今だってもう半分出かかってるってのによ。それって封印してねえのと同じだろ?
八重垣いちこ
その通りです。いずれ何かが出てくることは誰にも止められません。
ツッチー
ああん? じゃあ、虚島の再結界化や遠くにやるってのもただの時間稼ぎか?
八重垣いちこ
いえ……それもありますが、私には提案したいことがあります。
八重垣いちこ
出てくるのを止められないならば、せめてこちらの望む形に変えられないものか……と。
ツッチー
ぼっこの結界をコルセット代わりにして「何か」の形を外から整形する……そんな感じか?
八重垣いちこ
そうです。形と、そして名で縛る。
ツッチー
真剣少女と同じ…………お前さん、恐ろしいことを思いつくな。
八重垣いちこ
…………そうですね。
ツッチー
まあいい。それで、そいつはどんな形を目指す?
八重垣いちこ
島の「何か」は鎖や蛇、龍……つまり細長い形と相性が良いらしいのです。ならば、それには「刀」も当てはまるのではありませんか?
ツッチー
刀ぁ!? どんだけ馬鹿でかい刀を作るつもりだよ!? 島レベルのサイズだぞ!?
八重垣いちこ
…………まぁ、上手くいったとしても今は扱いきれるとは思えませんし、それで斬らなければならないものもまた今は──
ツッチー
ハッ、そんなもんいるわけねぇ。だが、刀にしちまうってのは悪くないアイデアかもしれん。空や海に逃げられるよりは、な。
ツッチー
上手くいけばいいぜ。勝算はあるか?
八重垣いちこ
わかりません。だから、大社にもまだ秘密の話です……おそらく同様のことは考えているでしょうが。
ツッチー
んじゃ今はその成功を願うしかねえ。あの島にはその願いが収まるくらいのスペースはまだあるんだろうからな!